第1章 始動 chapter3 『越谷 綾乃』
「よし、なら戦闘メンバーは富井、一条、越谷、私でいいな?」
するともう1人の生徒が手を挙げる。
「私も参加させてください!」
紫髪の低身長の女子が居た。保健委員の東雲 明日奈である。確かクラスでも珍しい闇属性の使い手だったか。
「私の傀儡術ならきっと戦闘の役に立つはずです!どうか戦闘に参加させてください!」
「よし、なら東雲も戦闘メンバー入りだな!陣形はどうする?」
「俺と越谷がメインで攻めます。一条と先生はサポートを、東雲は傀儡術を頼む!」
俺は即座に回答する。戦闘においてだけなら、この中にいる誰よりも経験値がある。
「近接型の富井と敵の弱点が付ける越谷がアタッカー、補助魔法を使える一条と私がサポート、東雲は敵をコントロールし、注意を引き付ける役だな!皆これでいいか?」
「はい!」
「それでは、皆いくぞ!」
教員の号令のもと、各々が立ち位置に着く。
「炎護の呪符〜雅〜!!」
綾乃がそう叫ぶと、味方の周り一面に護符が現れ、全体の士気を向上させた。
「続けて、炎撃の呪符〜焔〜!!」
今度は炎を纏った札を魔物に向かって放つ。火属性に弱いので、マンイーターが大きくよろめく。
「俺も負けてられっか!居合・零!!」
マンイーターがよろめいてる所にすかさず斬撃を入れる。
「やったか!?」
続けて二撃目を入れようとするが
「高志危ない!!」
背後から茨に巻き付かれ、マンイーターが俺を捕食しようとする。
「させません!マリオネットエンパイア!!」
後方に居た東雲がそう叫ぶとマンイーターは俺を放し、その茨の蔓で自身を攻撃し始める。
「すまない、東雲」
「大丈夫だよ!私が操ってるうちに攻撃を続けて!」
東雲はクラスでも珍しい闇属性の使い手であるが、その中でも一際レアな「傀儡術」の使い手である。中でもこのマリオネットエンパイアは食らったら最後、彼女の思うままに身体を操られてしまう。俺も以前、一騎討ちをした事があるが詠唱がもう少し短ければ完全にあやつり人形にされてたところだった。
「アースウォール!!」
「ヒール!!」
一条が大きな岩の壁を作り、マンイーターの行く手を幅み、教員が傷付いた俺に回復術を使う。
「炎護の呪符〜雅〜!!」
綾乃が再び味方全体にバフをかけ、俺達は攻撃を再開する。
「炎撃の呪符〜焔〜!!」
「居合・零!!」
「マリオネットエンパイア!!」
「高志、そろそろデカいのお見舞する?」
「そうだな!」
「あれを使うの…?」
「ああ、でも今度は魔物が相手だ!躊躇なく行ける!」
「分かった!無理はしないでね!」
「ああ!」
綾乃は両手を大きく前に突き出し
「上位炎魔法・炎奏の呪符〜鎮魂歌〜!!」
上位属性、獄炎に目覚めた者のみ使えることが出来る魔法。巨大な呪符を敵の周囲に召喚し、業火の炎で焼き払う。
ー居合は強力な斬撃、鎌鼬は急所を一点突きする剣技だ。ただそれらを駆使しても倒せない敵が現れたらどうする?ー
ー居合や鎌鼬を超える技を繰り出すということですか?ー
ーそうだ、私が見本としてそこの魔物相手に手本を見せるからそこで見ていろー
ーはい!ー
ー行くぞ、無属性剣技三の型…ー
ー凄い…あの上級魔物を一撃で…ー
ー無数の斬撃を瞬時に繰り出し、相手の複数箇所の急所を同時に攻撃する技だ。ただこの技を習得するには相当な年月を必要とする。それと…ー
ーそれと…ー
ーこの技はとても危険だ。完全に習得したとしても生命を殺めてしまう危険性もある。本当に倒したい相手が目の前に現れた時だけに使うんだぞ?ー
ーはい、師匠!ー
「師匠、俺はもう間違いません!
行くぞ、無属性剣技参の型…隼・零!!」
無数の斬撃がマンイーターに襲いかかる。衝撃に耐えられなくなり、断末魔を上げて消滅する。
「よっしゃ!!」
「やったね!高志!」
俺は綾乃とハイタッチをする。次の瞬間…
バタッ
俺は目の前が真っ白になり、その場で倒れる。
「大変!早く保健室に!!」
「私が連れていきます!」
???
「世界を、変えないか?」
俺は誰かに声を掛けられる。
「世界を、変えないか?我々の望む世界に」
目の前に人がいる、霧が立ち込めてて姿はよく見えない。
「お前は、誰だ?」
「俺は、お前。お前は、俺」
「お前は、俺?何言ってるんだ一体!?」
「魔王の支配する世界を、私は否定する…」
「魔王って、あの〖魔王ルシファー〗のことか!?」
「俺は、始める〖Rebirth〗を…」
「…カシ」
「タカシ…」
「高志!」
俺を呼ぶ声が聞こえて、ふと目が覚める。
「夢だったのか…」
目覚めると、保健室のベッドにいた。
「高志、心配したんだからね!!」
そこには綾乃がいた。
「ああ、すまない。で、あの後どうなったんだ?」
「あんたが倒れて、先生と東雲さんが保健室に連れて行ってくれたの。それでもしばらく目覚めなかったから、私がここにいた」
「ほんとにすまない、少し無理し過ぎたかもな」
一条との一騎討ちの後、連続でマンイーターと戦ったから身体に相当ダメージが入っていたんだろうな
「馬鹿!あんまり心配かけないで!」
綾乃が俺に抱きつく。相当泣いているようだ。
「あんたがあの技使うって言った時、私本当に不安だった…前にもあんな事あったし、もう少し使うのに躊躇すると思ったけど、あれだけ簡単に…」
「悪かったよ。でも、俺はもう間違わないから」
「ほんとに?約束できる?」
「ああ」
「ありがと。私あんたがどこかに行っちゃわないか本当に心配だった」
「どこにも行かねぇよ」
その後、綾乃はしばらくその場で泣いていた。
「明日、他の奴らにも謝っておくか」