赤崎の創作部屋

自作小説置き場です

第1章 「始動」 chapter1 『富井 高志』

「1000年前に起きた古代の大戦ではハンニバル王国、ザルツブルク帝国の2つの国の対立から始まり、以降周囲の国も巻き込んで世界規模の戦争へと発展した。帝国側は〖魔王〗と呼ばれる人造の生物兵器を生み出し、破壊の限りを尽くした。それに対し王国側は〖ディアボロス〗なる兵器を作り出し、帝国に対抗した。ディアボロスを使用したのは後に〖勇者王〗と呼ばれる王国の将軍であるが、彼の名は…」

 

教師が1人の生徒を指差す。

 

「富井!この将軍の名は何だったかね?」

「(-.-)zzZ」

「富井!聞いてるのか!」

「(´-﹃-`)Zz…」

「お前はまた寝ているのか!これ以上そのような態度を続けるならばお前の内申に響くぞ!」

「うぁい?」

 

俺は教師の怒鳴り声で目を覚ます。

そうか、今は世界史の授業中か…

 

「ったく、めんどくせぇな」

「答えられないならいい、そこで立ってろ!ならば越谷、代わりに答えてやってくれ」

 

俺はだるそうに席を立つ。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「やっと最後のコマが終わったか、帰ろ」

俺の名は富井 高志。どこにでもいる普通の高校生だ。

「高志ー!」

1人の女子生徒から声をかけられる。

「綾乃か、どうした?」

こいつは越谷 綾乃。俺の幼馴染みでこのクラスの学級委員をやっている。ルックスもよく、成績も優秀だから男子どもにモテるだけでなく、教師からの信頼も厚い。

「あんたそろそろ真面目に授業受けないと本格的に不味いわよ!氷川先生も内申に響くって言ってたでしょ?」

「あいあい、またその話ですか。もう聞き飽きたっつーの、じゃあな」

俺は軽く流してその場を後にする。

「あ、待ちなさい!」

この通り、俺は授業態度があまり良くない。将来特にやりたいことも無いし、テストの成績も平均くらいは取れている。努力するって事は、ただ面倒なだけだ。

 

帰り道

「あー、はいはいまた雑魚の群れですか?」

この世界は古代の魔王が残した爪痕により、そこらた中に野生の魔物が湧いている。俺たち人間は生まれつき与えられた〖先天属性〗と幼い頃からの戦闘訓練を元にそいつらから身を守っている。最も、一般市民では倒せないような魔物は戦闘能力の高い自警団に任せているのだが。

 

「スライムとワーウルフの群れ、雑魚がいくら群れても雑魚に変わりないな」

 

魔物達が一斉に俺をめがけて襲ってくる、ぱっと見た感じスライムが5体、その群れを束ねているワーウルフが1体ってところか

 

「居合・零!!」

 

俺の繰り出した斬撃が魔物達を薙ぎ払っていく。

 

「ふっ、雑魚が」

 

俺は剣を仕舞い、家までの道をまた歩き始める。俺たちの登下校はいつもこんな感じだ。車を運転する連中ならこのような下級魔物くらいであれば簡単に轢き殺せるが、俺みたいな運転免許を持ってない学生は自分の身で戦闘を強いられる。なんて子ども達に厳しい世界なんだよ、全く。

 

更に進むと、何やら公園の方から騒がしい音が聞こえる。

 

「あれは、アークデーモン?何故あんな上級クラスの魔物がこの近所に?」

 

本来だとこの辺には居ないはずの魔物が俺の家の近くの公園に出現している。しかもあれは上級クラスの魔物だ。自警団が束になってようやく勝てるかどうかってレベルのものだぞ!?

 

そのアークデーモン相手に、1人の少女が戦っている。

 

「アースエッジ!!」

 

少女の掛け声に合わせて、地面から巨大な岩塊が現れ、魔物に向かって襲いかかる。

彼女の先天属性は地属性だろう。

 

魔物は少しはびくととしたが、あまりダメージを受けていないようだ。今度は魔物が少女に向かって拳を振りかざす。

 

「危ない!」

俺は咄嗟に駆け込み、斬撃を放つ。

「居合・零!!」

 

俺の斬撃を受け、魔物は大きく後ろに怯む。

 

「あ、ありがとうございます!貴方は一体…?」

「自己紹介は後だ。とりあえずこいつを片付けるぞ!」

「はい!」

「俺があいつを攻撃する。お前は後ろでサポートしてくれ!」

「分かりました!」

 

魔物がまたこちらを襲い始める。

「アースウォール!!」

少女が呪文を詠唱すると、巨大な岩の壁が目の前を覆い始める。さしづめ補助魔法と言ったところか。

敵が狼狽えてるところを背後から回り、斬撃を繰り出す。

「居合・零!!」

敵が大きく後ろによろめく。

「ばーかデカブツ。俺はこっちだっつーの」

「おいあんた、さっき使ってた魔法を敵に向かって使ってくれ!」

俺は少女に向かって叫ぶ。

「え、あれは味方を守る為の補助魔法ですよ!?」

「それを攻撃に応用するんだ!あの岩塊で敵の動きを封じてる間に俺が攻撃を仕掛ける!」

「分かりました!アースウォール!!」

少女が魔法を魔物に向かって放つ。魔物の周囲に岩の壁が立ち込み、魔物は狼狽え始める。

「よし、今だ!」

俺は今の壁を飛び越え、技を放つ。

鎌鼬・零!!」

勢いのある突きが魔物の目に命中する。

「続けて居合・零!!」

魔物を真っ二つに斬り裂く。

 

「はぁはぁ、流石に上級魔物相手はきついな…」

 

「君達、大丈夫か!?」

上級魔物が発生したという通報を受け、自警団が駆けつける。遅すぎるんだよばーか。

「まさか、君達2人でアークデーモンを倒したというのか?」

自警団は目を丸くしてこちらに尋ねる。

「ああ、そうだが?」

「素晴らしい、その制服はこの近くの高校の学生か!もし良ければ学校を卒業したら自警団に入らないか!いや、今からでも構わない!」

「興味無いね」

 

俺はそう言ってその場を後にする。自警団?そんな面倒な仕事お断りだ。何より俺は群れるのが嫌いだ。あんな軍隊みたいなところに身を置くとか考えただけで反吐が出る。

 

「あの、助けていただきありがとうございました!」

さっきの少女がこちらに向かって駆けてくる。俺と同じ高校の女子か。それにしても1人で上級魔物に挑もうとするとはなんとも威勢がいい。このまま1人で戦っていたら間違いなく死んでたぞお前。

「私は一条花梨と言います。貴方は?」

「名乗るまでもねぇよ」

 

他人との馴れ合いはごめんだ。

少女は一礼を見届け、俺はその場を去った。

 

「それにしても何故こんなところに上級魔物がねぇ?」

 

アパートに帰ると、LINEの通知が来ていた。

綾乃からか、なになに「数学の課題明日までだからちゃんとやりなさい」だって?

 

めんどくせぇ