赤崎の創作部屋

自作小説置き場です

第1章 始動 chapter4 『東雲 明日奈』

次の日

俺が教室に入ると2人の女子生徒が俺の元へ駆けてきた。一条と東雲だ。

 

「富井さん、大丈夫でしたか!?」

「富井君、無事で良かったです!」

 

なんだ?俺モテ期なのか?

 

「問題ない、昨日は迷惑を掛けたな」

「いえいえ、昨日保健室に行ってから暫く目覚めなかったみたいなので心配しましたよー」

「それは済まなかったな。それにしても昨日は2人とも本当に助かった。礼を言う。」

「私なんて大したことしてませんよー富井さんと越谷さん、東雲さんの活躍があったからで」

「ところで東雲、傀儡術とは珍しいのを使うんだな。どこで習得したんだ?」

戦闘マニアの俺はこんな時でも他人の戦闘スタイルについて気になってしまう。

「私、お婆ちゃんが傀儡術の使い手で、子どもの頃悪さをするとあやつり人形みたいにされておしおきされてましてね…汗」

「何それ怖」

「おしおきと言っても簡単なものですよ。それに家の周りに魔物が押し寄せて来た時もお婆ちゃんが傀儡術で追い払ってくれました。私はお婆ちゃんに憧れて傀儡術を覚え始めたんですよ!」

「つまり東雲の師匠はお婆ちゃんだったって事?」

「そうですね!私もたまたま闇属性だったもので、お婆ちゃんと同じ術を習う事ができました。少し独学の部分もあるんですけどね」

「なるほど」

「富井君も師匠みたいな人っているんですか?」

「ああ、そうだな。昔剣技を教えてくれた先生がいたよ」

「富井君ってかなり珍しい属性使ってるんですよね!零属性でしたっけ?」

「そうだね。この属性の使い手って世界に数人しかいないって師匠が言ってたな」

「羨ましいです!身体能力が高い上に、非常にレアな属性を扱えるなんて!」

東雲の目が輝く。もしやこいつも戦闘マニアか?

「身体能力に関しては生まれつき高かったってのもあるけど、大体は師匠の特訓の成果だな。かなり無理な修行もされられたし…汗」

 

キーンコーンカーンコーン

 

「あ、授業ですね。またいつかお話しましょう」

「ああ!」

 

放課後

俺は未提出の課題をやりに図書室まで来ていた。畜生あの先公…少し提出日に遅れてたからって…あそこまで言うことないだろ。

図書室に入ると、1人の女子生徒が本を読んでいた。東雲だ。

「あ、富井君も読書ですか?」

「いや、課題をやりにな。東雲は何を読んでるんだ?」

「1000年前の世界大戦についての本ですね」

「世界大戦か、あの魔王とか勇者王が出てくる?」

「そうですね!私歴史とか好きで、特に古代の世界大戦史は興味があります」

「勇者王って凄いよな、魔王を倒して戦争を終わらせただけでなく、味方軍の暴走した兵器まで止めるなんて」

「そうなんですよ!勇者王は今や世界中の剣士の憧れの存在みたいなものですからね」

「単身で破壊の限りを尽くした魔王も相当だけどな。魔物という現代まで爪痕を残した訳だし。」

「その魔王でも唯一成し遂げられなかった事があるらしいんですよ」

「なんだ、世界征服か?」

「世界征服というより、世界の再創造ですね」

「世界の再創造?」

「そうですね、一般的に魔王の目的は世界征服だとか人類の滅亡だとか言われてますけど、あれは間違った解釈みたいです」

「でも帝国は自分達の領土を広げたいだけであって、そんな事まで望んでなかったんじゃないの?」

「帝国も魔王に利用されてたんですよ、愚かな事に。自分達の作った兵器に」

「実際帝国軍は魔王軍だったようなものか…」

「そんな感じですね、その魔王の目的は破壊と想像の神『混沌の大蛇ウロボロス』を現世に蘇らせて自分と魔物、所謂『魔族』以外の生命体を淘汰して魔族だけが住む事のできる世界の再創造を試みようとしたんですよ」

「それを勇者王に止められたと」

「そうですね、流石の魔王でも勇者王と彼が扱う戦闘兵器『ディアボロス』には敵いませんでした」

「なるほどね」

「なら私はこれで帰りますね。富井君の勉強の邪魔をしたらいけませんし。課題頑張ってください!」

「ああ、またな」

 

東雲は図書室を出ていく。

「魔王ルシファーか…」

俺はふと昨日見た夢の事を思い出した。

魔王が現代にいたら大変な事になるだろうな…あの夢は何かの予兆なのか…いや考え過ぎか…

 

モヤモヤしながらも、俺は課題に手を付け始める。