DREAM 登場人物紹介 ~一条 花梨~
〇一条 花梨
age17(female)
152cm
先天属性:地
DREAMのメインヒロイン。高志のクラスに突如転校してきた謎の少女。 魔力が普通の人より高い。
・使用技
アースエッジ
花梨の使用する地属性魔法。 地面から巨大な岩の塊を繰り出し敵を貫く。
アースウォール
花梨の使用する地属性魔法。 岩壁の障壁を作り出し、味方全体を護る。
アースクエイク
花梨の使用する地属性魔法。 地面を大きく揺らし攻撃。
☆奥義
花梨の奥義。岩でできた巨大な槍を召喚し、敵にぶつける。
☆秘奥義1
ブリューナク
花梨の秘奥義。グングニルより大きな槍を作り出し、絶大威力の攻撃を放つ。
☆秘奥義2
トリシューラ
ブリューナクの槍を3本生成し、敵にぶつける花梨最大の秘奥義。
DREAM 登場人物紹介 ~富井 高志~
DREAMに登場するキャラたちの一覧です。
〇富井 高志
age 17(male)
175cm
先天属性:零
DREAMの主人公。普通の高校生だったが、ある日突然世界の存亡を賭けた戦いに赴く事となる。 身体能力が高い。
・使用武器
虚無ノ八岐大蛇(きょむのやまたのおろち)
高志の使用する武器。一般人が持つと普通の剣だが、零属性に選ばれた者が扱う事により真価を発揮する。 作中では「八岐大蛇」や「虚無刀」と略す予定。
・使用技
居合・零
高志の基本的な剣技。居合の構えで精神を研ぎ澄まし、敵を一心に斬り裂く。
高志の剣技の1つ。音速で敵の喉元に入り込み、強烈な突きを放つ。
隼・零(はやぶさ・ぜろ)
高志の剣技の1つ。素早い斬撃で敵の急所を複数箇所攻撃する。
☆奥義
神凪・零(かんなぎ・ぜろ)
高志の奥義。居合、鎌鼬、隼の3つの剣技を一気に繰り出す大技。
☆秘奥義1
幻影蝶・虚無(げんえいちょう・きょむ)
高志の秘奥義。剣を七色に輝かせ、絶大威力の斬撃を放つ。
☆秘奥義2
輝光時空送葬砲(レイディアント・タキオン・ブラスト)
高志の上位秘奥義。巨大な光の奔流で敵を呑み込む。
DREAM 世界観・用語集
以前Twitterの方でも投稿したのですが、用語等は一ヶ所に纏めた方が分かりやすいという意見を以前Twitterの方でも投稿したのですが、用語等は一ヶ所に纏めた方が分かりやすいという意見をいただきましたので、こちらでも投稿いたします。(基本的にツイッターからのコピペとなります)
〇DREAM 世界観
基本的に現代社会がベースとなっておりますが、人間は先天属性に応じた魔法を使うことができ、世の中のあちこちには魔王が作り出したモンスターが徘徊する世界となっております。
【三界】
DREAMは3つの世界から成り立っております。
※人間が住む「現界」、聖域の16天使(後に解説)が統治する「天界」、混沌の大蛇ウロボロス(後に解説)が住むとされる「地界」。
【ガイア】
三界を統治する存在。「星の思念体」により生まれたガイア12使徒(後に解説)により世界の秩序が保たれています。
〇用語解説
【先天属性】
DREAMにおける人間は生まれながら1つの属性を持っており、その属性の魔法を行使することが出来ます。 先天属性は火・水・風・地・闇・光の6属性
最初は初級魔法(ファイア、アイス等)しか使えませんが修行を重ねるに連れて中級以上の魔法(フレイム、ブリザード等)も使用出来るようになります。 また、人によっては後天的に複数属性を持つことが出来るようになります。
【上位属性】
先天的に特別魔力が高い人間が上級魔法を習得した後、先天属性が昇華した属性です。上位属性を習得できる人間は基本的に1000人に1人と言われています。
火→獄炎、水→凍氷、風→雷電、地→豊穣、闇→深淵、光→神聖
【零属性】
ガイアに選ばれた人間のみが行使する事が出来る属性。属性相性とは無縁の所にいて、相手の防御力に関わらず攻撃を通す事が出来ます。 DREAMでは、各主人公キャラがこの属性を持ちます。
【冥属性】
魔王ルシファー(後に解説)のみが行使できる属性です。零属性と同様、属性相性に干渉しません。
【属性相性】
火 風属性に強く、水属性に弱い
水 火属性に強く、地属性に弱い
風 地属性に強く、火属性に弱い
地 水属性に強く、風属性に弱い
闇 光属性に強く、光属性に弱い
光 闇属性に強く、闇属性に弱い
零 どの属性にも干渉しない
冥 どの属性にも干渉しない
※上位属性でも属性相性関係は同じです。
【魔王ルシファー】
古代の世界大戦の時代に人間によって生み出された生物兵器。自らの手で異形の魔物(モンスター)を作成する事ができ、人間を無差別に攻撃します。 勇者王に封印され、現在は眠りについています。
【勇者王ザクセン】
世界大戦時に共和国軍にふと現れた勇者。ルシファーを撃破し、世界の脅威となる存在を抹消した事から彼は伝説となり、「勇者王」として語り継がれている。
【魔物】
魔王によって生み出された存在。基本的に人間にとって害をなす存在であるため、討伐対象となっています。動物や植物、反物質を模した物等、種類は様々。
個体の強さによって、低級魔物、中級魔物、上級魔物に分けられており、これより危険な存在である魔物に関しては「特級指定魔物」として現界の全国家より指定されている。
【聖域の16天使】
三界の1つ、天界を統治する16人の上級天使です。天使は人間とは異なり、先天属性は全て光属性となっております。
~16天使一覧~
大天使アポロニア、副天使マリア、ガブリエル、ウリエル、ザラキエル、サリエル、ノキエル、ベヌエル、アラバキ、メタトロン、ヴィーナス、イズライール、ハスデヤ、ラフィエル、ハールート、マールート
【ガイア12使徒】
星の思念体、ガイアが生み出した世界の秩序を維持する為の12人の存在です。使徒は、人間とは異なる様々な特殊能力を行使する事が出来ます。
また、13人目以降の使徒も存在しており、彼らは「エクストラナンバー」と呼ばれています。
~ガイア12使徒一覧~
Ⅰ 秩序のマルコシアス
Ⅱ 叡智のセラ
Ⅲ聖騎士アナスタシア
Ⅳ竜使いサーガ
Ⅴ 剛腕のアトラス
Ⅵ激槍のカーティス
Ⅶ雄王アレキサンダー
Ⅷ漆黒のジークフリート
Ⅸ 吉凶師ターラ
Ⅹ 海王ポセイドン
ⅩⅠ 腐敗のディートリンデ
ⅩⅡ 戦と和の天秤サジタリウス
【ディアボロス】
世界大戦時に対魔王の為に人間が生み出した戦闘兵器。古代の勇者王により使用されたが、大戦後に暴走し、彼に封印されました。
【ウロボロス】
三界の1つ、地界に住む存在であり「破壊と再生の執行者」と呼ばれています。
一度目覚めると、世界中のあらゆる生命体を淘汰し、世界を無に還す存在として世界的な脅威となっています。
【星の雫】
「星の思念体」の動力源であり、代々選ばれた人間の少女がエネルギーとなっております。 星の雫となった少女は意識を完全に失い、二度と人間に戻ることは出来ません。
【七大竜王】
属性を司る竜、人間はこれらから属性を与えられていると言われています。
冥属性のみ、人間が作り出した魔王のみが持つ属性なので、対応した竜は存在しません。
~竜王一覧~
炎王龍サラマンダー
天嵐龍テンペスト
地剛龍アース
闇天龍アビス
聖域龍ハンニバル
虚無龍ゼロエレメンタル
第1章 始動 chapter5 『氷川 環』
その日も、俺は職員室に呼び出されていた。
「富井、また課題未提出か。これで何回目だ?」
担任の氷川先生である。俺が課題を全く出していなかった事に対して痺れを切らしたそうだ。
「別に課題くらいやんなくてもいいじゃないすか。テストで赤点取ってる訳じゃないんだし」
氷川先生は呆れた顔をして、顔に手をやる。
「そう言う問題ではないだろ?何回も言ってるが内申点にそろそろ響いてくるぞ?君は特別成績が言い訳じゃないし、部活もやってない、かと言ってこれと言った資格を持ってる訳では無いだろ」
「零属性…(ボソッ)」
「あのなぁ、自警団にでも入るつもりなのか?確かにお前の戦闘能力が高いのは認める。ただそれだけが高くても社会に出たらやっていけないぞ?」
確かに正論だ。魔物と戦う事ができるだけじゃ人間社会は生きていけない。ただめんどくせぇ。
「他の先生からも苦情が来てるぞ。特に英語のビアンカ先生は『富井君は2年になってから全く課題を出していないわ。ステキね』って言ってたぞ。素敵ではないが」
「はいはいやればいいんでしょやれば」
氷川先生はムッとする
「なんだその態度は?大体お前はいつも…」
この後長い説教を聞かされたが、先生の黒タイツ越しの絶対領域が終始気になり、話しが全く頭に入ってこなかった。
下校中
商店街の方が何やら騒がしかった。
「キャーッ!魔物よー!」
「た、助けてくれー!」
「自警団はまだかー!?」
どうやら商店街に魔物が発生したらしい。ちょっと相手しに行くとするか。
そこにいたのは、棍棒を持った1つ目の巨人だった。
「ダイダラボッチ、また上級魔物か!」
アークデーモンにマンイーター、更にはダイダラボッチと最近この付近に上級魔物が相次いで発生している。これは流石に異常現象だ。
「商店街にいる人は1人残らず避難してください!こいつは俺が仕留めます!」
「あんた、若いのに大丈夫かね?」
付近にいた老人に声をかけられる。
「ええ、戦闘には自信がありますから!この前も公園に出現したアークデーモンを倒してますし!」
「あのデカブツを退治してくれたのは君だったのかい?これは頼もしい!頼む、この街を救ってくれい!」
「分かったよ爺さん、とりあえず避難してください!」
「健闘を祈るぞ」
そう言ってその老人は他の住民と共に避難して行った。
「さて、やりますか」
俺が剣を構えようとしたところ…
「お前1人であいつと戦うのか?流石に無理がないか?」
「せ、先生!?」
俺の後ろにいたのは氷川先生だった。
「仕事が早く終わったから商店街で買い物してたらこのザマだよ、全くツいてないね」
「助かります!1人より2人の方が効率いいですし!」
氷川先生は水属性の使い手。戦闘能力も高く、俺の通ってる高校の教員では間違いなく最強クラスだ。まともに戦ったら俺でも勝てるか分からない。
「ずべこべ言ってる暇はないよ!さぁ、戦闘開始!」
「はい!」
ダイダラボッチも俺達に気付いたのか、ゆっくりとこちらへ向かってくる。
「頞部陀!!」
氷川先生がそう叫ぶと、ダイダラボッチの周囲に巨大な氷の塊が現れ、閉じ込める。
「頞部陀!!続けて虎虎婆!!」
水属性魔法の連続詠唱。氷川先生の得意技だ。普通魔法の詠唱にはかなりのエネルギーを消費し、次の詠唱までクールダウンの時間が発生するが、氷川先生にはそれが殆ど無い。相当魔法の修行を積まないと成し得ない技だ。
「富井!何をボーッとしている!さっさと攻撃しろ!」
「言われなくても分かってますよ!居合・零!!」
氷の檻に閉じ込められたダイダラボッチに強力な斬撃を与える。中級魔物くらいであればこれで仕留められるのだが、流石は上級魔物とあってダメージが少し入る程度だ。
「頞部陀!頞部陀!虎虎婆!!」
氷川先生の連続詠唱と同時に、俺も斬撃を放つ。
「居合・零!!」
ダイダラボッチが後ろに大きくよろめく。
「富井!次で止めを刺す!お前も斬撃を合わせろ!」
「分かりました!」
「奥義・鉢特摩!!!」
辺り一面が凍り始め、極寒の寒さになる。普通の人であれば立っていられるのがやっとだろう。
地面も凍ってしまうので足場が多少悪くなるが、逆にこの滑りやすいのを利用し、普段では出来ない程の高い跳躍をする事ができる。フィギュアスケート等で使われている原理だ。
「隼・零!!」
俺は身動きが取れなくなっているダイダラボッチを目掛けて跳躍し、高速で複数の斬撃を繰り出す。
「これで止めだ!鎌鼬・零!!」
ダイダラボッチの巨大な1つ目を目掛けて強力な突きを繰り出す。上級魔物といえど、流石にこの連続のダメージには耐えられず、消滅していった。
「やった、倒したぞ!」
「見事だ、富井!」
俺のような近接型のスピードタイプであれば鈍足のダイダラボッチのような1人でも倒せたが、苦戦はさせられたであろう。今回は凍結系の魔法を使える氷川先生がいて本当に助かった。
「ふっふっふ、ダイダラボッチをいとも簡単に倒すとは流石だな」
前方から誰かの声が聞こえる。
「誰だ!?」
そこに居たのは、長身で金髪の少しチャラい見た目をした剣士だった。
「すまない、自己紹介が遅れたな。俺はゼパル、世間じゃよく『天魔王』って呼ばれてたなぁ」
「天魔王って、あの古代対戦の!?」
「ザルツブルク側の名将…」
俺は目を丸くする。
「冗談言え!天魔王は1000年前の人間だ!このハッタリ野郎が!」
「ハッタリかどうか試してみるぅ?」
ゼパルが剣を構える。
「上等だ!行くぞハッタリ野郎!」
「うおおおおぉ、居合・零!!」
「甘いな」
ゼパルは俺の懇親の斬撃をひょいと交わし、反撃を繰り出す。
「赤き悪魔(スカーレットデーモン)!!」
ゼパルの斬撃により、俺は後ろに大きく吹き飛ばされる。
「頞部陀!!虎虎婆!!」
氷川先生も凍結魔法の詠唱をする。
「連続詠唱か、そこのおねーちゃんは少しやるじゃねぇか?でもまだまだぁ!極焔獄(インフェルノ)!!」
辺り一面に炎の渦が立ち込め、氷を溶かしていく。
「くそっ!」
「なんだ、この程度か?全くつまんねーなぁ
このまま止めを刺してやってもいいが、それだと面白くねぇ。俺がこの国の強いヤツ集めて闘技大会を開いてやるからよぉ、そこで勝ち残ったらリベンジを受けてやってもいいぜぇ?な、悪くない話だろ?」
「くっ、仕方あるまい。今ここで貴様に敗れたのは心残りだが、闘技大会とやらに出てやる。富井はどうだ?」
「ああ、もちろん参加するぜ!」
「思ったよりも聞き分けが良くて助かったぜぇ。闘技大会は1週間後、都内最大のバトルアリーナ『コロッセオ』で行う。ルールは1グループ2人のグループ制。もちろん1人で参加してもらってもいいぜぇ?そこでトーナメントを行ってもらい、優勝したチームがこの俺と戦う権利が得られるってもんだ」
「分かった。ただゼパル、1つだけ聞きたい。最近この付近に上級魔物が多数発生しているが、これはお前が関係しているのか?」
「は?そんな事する訳ないだろぉ?俺は強いヤツと直に戦いたいだけさ?そんな汚いマネはしねぇよ」
そう言うと彼は去っていった。
相次ぐ上級魔物の出現、亡者であるはずの天魔王との遭遇。不可解な出来事が次々と起こる。
第1章 始動 chapter4 『東雲 明日奈』
次の日
俺が教室に入ると2人の女子生徒が俺の元へ駆けてきた。一条と東雲だ。
「富井さん、大丈夫でしたか!?」
「富井君、無事で良かったです!」
なんだ?俺モテ期なのか?
「問題ない、昨日は迷惑を掛けたな」
「いえいえ、昨日保健室に行ってから暫く目覚めなかったみたいなので心配しましたよー」
「それは済まなかったな。それにしても昨日は2人とも本当に助かった。礼を言う。」
「私なんて大したことしてませんよー富井さんと越谷さん、東雲さんの活躍があったからで」
「ところで東雲、傀儡術とは珍しいのを使うんだな。どこで習得したんだ?」
戦闘マニアの俺はこんな時でも他人の戦闘スタイルについて気になってしまう。
「私、お婆ちゃんが傀儡術の使い手で、子どもの頃悪さをするとあやつり人形みたいにされておしおきされてましてね…汗」
「何それ怖」
「おしおきと言っても簡単なものですよ。それに家の周りに魔物が押し寄せて来た時もお婆ちゃんが傀儡術で追い払ってくれました。私はお婆ちゃんに憧れて傀儡術を覚え始めたんですよ!」
「つまり東雲の師匠はお婆ちゃんだったって事?」
「そうですね!私もたまたま闇属性だったもので、お婆ちゃんと同じ術を習う事ができました。少し独学の部分もあるんですけどね」
「なるほど」
「富井君も師匠みたいな人っているんですか?」
「ああ、そうだな。昔剣技を教えてくれた先生がいたよ」
「富井君ってかなり珍しい属性使ってるんですよね!零属性でしたっけ?」
「そうだね。この属性の使い手って世界に数人しかいないって師匠が言ってたな」
「羨ましいです!身体能力が高い上に、非常にレアな属性を扱えるなんて!」
東雲の目が輝く。もしやこいつも戦闘マニアか?
「身体能力に関しては生まれつき高かったってのもあるけど、大体は師匠の特訓の成果だな。かなり無理な修行もされられたし…汗」
キーンコーンカーンコーン
「あ、授業ですね。またいつかお話しましょう」
「ああ!」
放課後
俺は未提出の課題をやりに図書室まで来ていた。畜生あの先公…少し提出日に遅れてたからって…あそこまで言うことないだろ。
図書室に入ると、1人の女子生徒が本を読んでいた。東雲だ。
「あ、富井君も読書ですか?」
「いや、課題をやりにな。東雲は何を読んでるんだ?」
「1000年前の世界大戦についての本ですね」
「世界大戦か、あの魔王とか勇者王が出てくる?」
「そうですね!私歴史とか好きで、特に古代の世界大戦史は興味があります」
「勇者王って凄いよな、魔王を倒して戦争を終わらせただけでなく、味方軍の暴走した兵器まで止めるなんて」
「そうなんですよ!勇者王は今や世界中の剣士の憧れの存在みたいなものですからね」
「単身で破壊の限りを尽くした魔王も相当だけどな。魔物という現代まで爪痕を残した訳だし。」
「その魔王でも唯一成し遂げられなかった事があるらしいんですよ」
「なんだ、世界征服か?」
「世界征服というより、世界の再創造ですね」
「世界の再創造?」
「そうですね、一般的に魔王の目的は世界征服だとか人類の滅亡だとか言われてますけど、あれは間違った解釈みたいです」
「でも帝国は自分達の領土を広げたいだけであって、そんな事まで望んでなかったんじゃないの?」
「帝国も魔王に利用されてたんですよ、愚かな事に。自分達の作った兵器に」
「実際帝国軍は魔王軍だったようなものか…」
「そんな感じですね、その魔王の目的は破壊と想像の神『混沌の大蛇ウロボロス』を現世に蘇らせて自分と魔物、所謂『魔族』以外の生命体を淘汰して魔族だけが住む事のできる世界の再創造を試みようとしたんですよ」
「それを勇者王に止められたと」
「そうですね、流石の魔王でも勇者王と彼が扱う戦闘兵器『ディアボロス』には敵いませんでした」
「なるほどね」
「なら私はこれで帰りますね。富井君の勉強の邪魔をしたらいけませんし。課題頑張ってください!」
「ああ、またな」
東雲は図書室を出ていく。
「魔王ルシファーか…」
俺はふと昨日見た夢の事を思い出した。
魔王が現代にいたら大変な事になるだろうな…あの夢は何かの予兆なのか…いや考え過ぎか…
モヤモヤしながらも、俺は課題に手を付け始める。
第1章 始動 chapter3 『越谷 綾乃』
「よし、なら戦闘メンバーは富井、一条、越谷、私でいいな?」
するともう1人の生徒が手を挙げる。
「私も参加させてください!」
紫髪の低身長の女子が居た。保健委員の東雲 明日奈である。確かクラスでも珍しい闇属性の使い手だったか。
「私の傀儡術ならきっと戦闘の役に立つはずです!どうか戦闘に参加させてください!」
「よし、なら東雲も戦闘メンバー入りだな!陣形はどうする?」
「俺と越谷がメインで攻めます。一条と先生はサポートを、東雲は傀儡術を頼む!」
俺は即座に回答する。戦闘においてだけなら、この中にいる誰よりも経験値がある。
「近接型の富井と敵の弱点が付ける越谷がアタッカー、補助魔法を使える一条と私がサポート、東雲は敵をコントロールし、注意を引き付ける役だな!皆これでいいか?」
「はい!」
「それでは、皆いくぞ!」
教員の号令のもと、各々が立ち位置に着く。
「炎護の呪符〜雅〜!!」
綾乃がそう叫ぶと、味方の周り一面に護符が現れ、全体の士気を向上させた。
「続けて、炎撃の呪符〜焔〜!!」
今度は炎を纏った札を魔物に向かって放つ。火属性に弱いので、マンイーターが大きくよろめく。
「俺も負けてられっか!居合・零!!」
マンイーターがよろめいてる所にすかさず斬撃を入れる。
「やったか!?」
続けて二撃目を入れようとするが
「高志危ない!!」
背後から茨に巻き付かれ、マンイーターが俺を捕食しようとする。
「させません!マリオネットエンパイア!!」
後方に居た東雲がそう叫ぶとマンイーターは俺を放し、その茨の蔓で自身を攻撃し始める。
「すまない、東雲」
「大丈夫だよ!私が操ってるうちに攻撃を続けて!」
東雲はクラスでも珍しい闇属性の使い手であるが、その中でも一際レアな「傀儡術」の使い手である。中でもこのマリオネットエンパイアは食らったら最後、彼女の思うままに身体を操られてしまう。俺も以前、一騎討ちをした事があるが詠唱がもう少し短ければ完全にあやつり人形にされてたところだった。
「アースウォール!!」
「ヒール!!」
一条が大きな岩の壁を作り、マンイーターの行く手を幅み、教員が傷付いた俺に回復術を使う。
「炎護の呪符〜雅〜!!」
綾乃が再び味方全体にバフをかけ、俺達は攻撃を再開する。
「炎撃の呪符〜焔〜!!」
「居合・零!!」
「マリオネットエンパイア!!」
「高志、そろそろデカいのお見舞する?」
「そうだな!」
「あれを使うの…?」
「ああ、でも今度は魔物が相手だ!躊躇なく行ける!」
「分かった!無理はしないでね!」
「ああ!」
綾乃は両手を大きく前に突き出し
「上位炎魔法・炎奏の呪符〜鎮魂歌〜!!」
上位属性、獄炎に目覚めた者のみ使えることが出来る魔法。巨大な呪符を敵の周囲に召喚し、業火の炎で焼き払う。
ー居合は強力な斬撃、鎌鼬は急所を一点突きする剣技だ。ただそれらを駆使しても倒せない敵が現れたらどうする?ー
ー居合や鎌鼬を超える技を繰り出すということですか?ー
ーそうだ、私が見本としてそこの魔物相手に手本を見せるからそこで見ていろー
ーはい!ー
ー行くぞ、無属性剣技三の型…ー
ー凄い…あの上級魔物を一撃で…ー
ー無数の斬撃を瞬時に繰り出し、相手の複数箇所の急所を同時に攻撃する技だ。ただこの技を習得するには相当な年月を必要とする。それと…ー
ーそれと…ー
ーこの技はとても危険だ。完全に習得したとしても生命を殺めてしまう危険性もある。本当に倒したい相手が目の前に現れた時だけに使うんだぞ?ー
ーはい、師匠!ー
「師匠、俺はもう間違いません!
行くぞ、無属性剣技参の型…隼・零!!」
無数の斬撃がマンイーターに襲いかかる。衝撃に耐えられなくなり、断末魔を上げて消滅する。
「よっしゃ!!」
「やったね!高志!」
俺は綾乃とハイタッチをする。次の瞬間…
バタッ
俺は目の前が真っ白になり、その場で倒れる。
「大変!早く保健室に!!」
「私が連れていきます!」
???
「世界を、変えないか?」
俺は誰かに声を掛けられる。
「世界を、変えないか?我々の望む世界に」
目の前に人がいる、霧が立ち込めてて姿はよく見えない。
「お前は、誰だ?」
「俺は、お前。お前は、俺」
「お前は、俺?何言ってるんだ一体!?」
「魔王の支配する世界を、私は否定する…」
「魔王って、あの〖魔王ルシファー〗のことか!?」
「俺は、始める〖Rebirth〗を…」
「…カシ」
「タカシ…」
「高志!」
俺を呼ぶ声が聞こえて、ふと目が覚める。
「夢だったのか…」
目覚めると、保健室のベッドにいた。
「高志、心配したんだからね!!」
そこには綾乃がいた。
「ああ、すまない。で、あの後どうなったんだ?」
「あんたが倒れて、先生と東雲さんが保健室に連れて行ってくれたの。それでもしばらく目覚めなかったから、私がここにいた」
「ほんとにすまない、少し無理し過ぎたかもな」
一条との一騎討ちの後、連続でマンイーターと戦ったから身体に相当ダメージが入っていたんだろうな
「馬鹿!あんまり心配かけないで!」
綾乃が俺に抱きつく。相当泣いているようだ。
「あんたがあの技使うって言った時、私本当に不安だった…前にもあんな事あったし、もう少し使うのに躊躇すると思ったけど、あれだけ簡単に…」
「悪かったよ。でも、俺はもう間違わないから」
「ほんとに?約束できる?」
「ああ」
「ありがと。私あんたがどこかに行っちゃわないか本当に心配だった」
「どこにも行かねぇよ」
その後、綾乃はしばらくその場で泣いていた。
「明日、他の奴らにも謝っておくか」
第1章「始動」 chapter2 『一条 花梨』
次の日
俺が教室に入るとクラス全体がざわついてた
「おいおい、今日このクラスに転校生が来るんだってよ」
「高校で転校って珍しいな、ちなみに男子か?女子か?」
「それが結構可愛い女の子だってよ」
「お、マジか!」
なんだ、転校生か。
友達とか作らない主義だから正直転校生とかどうでもいい
俺が机で突っ伏してると1人の女子が声をかけてきた。
「高志、課題はちゃんとやったの?」
綾乃だった。
「ああ、めんどくせーけど一応やったよ」
「それならよかった。あんたの事だからまた放ったらかしてるのかと思った」
「いちいちめんどくせぇな。お前は俺の母ちゃんか何かか?」
「そういう訳では無いけど、一応ちゃんと心配してるんだよ。昨日のLINEも既読スルーだったし」
「返信が面倒なだけだよ。全く鬱陶しいなこの胸だけ女は」
俺がそう言うと、綾乃は顔を赤らめて自身の豊満な胸を抑える。
「この変態!スケベ!痴漢!もう知らない!」
綾乃は怒って去っていった。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴ったと同時に、教室のドアが勢いよく開く。
「お前らー、席につけー!」
担任の氷川 環先生が教室に入ってくる。
担当教科は世界史。少し言動はきついが芯は通ってるおり、なにより美人だから男女問わず生徒からの人気が高い。ちなみに独身。
「皆も知ってると思うが、今日このクラスに転校生がやってくる。一条、入ってくれ」
教室のドアが開き、銀髪ロングの女子が入ってくる
「一条 花梨と言います。よろしくお願いします。」
ん、この子は昨日の?
「お前らー、静かに!えーと一条の席はー、お!富井の横が空いてるな」
こういう作品のお約束というか、俺は所謂「主人公席」というところに座っている。どうしてこう都合よく窓から2番目の席が空いてるのだろうか?
「ちぇっ、なんでよりによってあのクソ陰キャの隣なんだよ…」
「富井ー俺と席変わってくれよぉー」
クラスの男子がざわつく。
「お前ら、静かにー。慣れない事も多いだろうから色々と教えてやれよー」
先生がそう言うと、転校生がこちらへ歩いてくる。
「富井さんって言うんですね、昨日はありがとうございました。これからよろしくお願いします」
「あ、ああよろしく」
昨日何故単身でアークデーモンと戦っていたのか聞きたかったが、休み時間は一条がクラスのやつらに質問責めにされてたので流石に無理だった
5限目は「護身」の授業だった。この世界で魔物から身を守る科目であり、実際に武器は魔法を用いての実践訓練を行う。今日は訓練用の戦闘ロボットを相手にする授業だった。
「アースエッジ!!」
一条の声が響き渡る。
昨日見た岩塊が戦闘ロボに襲いかかり次々と破壊していく。昨日も見たが、中々の戦闘能力だ。
「一条さん私と同じ地属性なのに凄い!今度その魔法教えてよ!」
「女子なのに戦闘能力高くて羨ましいぜ。それに比べて俺なんて…」
一条は当然クラスの皆にも注目される存在となった。
「もしや富井とも互角に戦えるんじゃね?」
そう、俺は勉強は平均クラスだが、生まれ持った戦闘の才能から護身の授業の成績だけは良かった。
ちなみに俺の先天属性は『零』。基本属性のどれにも属さない特別な属性で、属性相性に関係なく戦闘が行えるので、戦闘ではかなり有利となる。
「富井さん、よろしければ一騎討ちをさせていただけないでしょうか?」
一騎討ちとは、言葉の通り生徒が1対1で戦うルールの事だ。護身の授業の時間内で、両者の合意のもと、担当教員に申請さえすれば自由に行う事ができる。
「ああ、構わないが」
俺も正直最近この授業は退屈だったから丁度いい。俺と互角に戦える生徒が全くおらず、一騎討ちを申し込んでも断られる一方だからだ。アークデーモンに単身で勝負を挑もうとしたような実力だ。少しは骨があるといいが。
俺たちは担当教員に申請をし、今いる訓練所の隣にあるバトルアリーナへ移動した。
「これより、富井 高志VS一条 花梨の一騎討ちを行う!両者ルールは分かっているな?」
「ああ!」
「はい!」
一騎討ちのルールは簡単、制限時間内にどちらかが降参するまで戦う事ができる。但し相手を怪我させたり、殺すような真似をすればすぐに失格負けだ。
「一条さーん、あんなクソ陰キャやっつけてやれー!」
「そうだそうだー!一条さんに何かあったらぶっ潰すぞおめぇ!」
周りの生徒のヤジが飛んでくる。鬱陶しい。
ちなみに一騎討ちは護身の授業中の生徒なら誰でも観戦が可能だ。尤も、観戦を理由にして授業をサボろうとする生徒もいるが。
「それでは、バトルファイッ!!!」
教員の掛け声と共に戦闘が始まる。
「よろしくお願いします!」
「ああ、遠慮なくいくぜ!」
「居合・零!!」
先に仕掛けたのは俺の方だ、居合による素早い斬撃が一条に襲いかかる。
「甘いですよ!アースエッジ!!」
一条は斬撃をひょいと躱し、地属性魔法を繰り出す。
俺は地面から出てきた岩塊に飛び乗り、その上を伝って移動する。
「居合・零!!」
俺は再び斬撃を繰り出す。
「アースウォール!!」
地面から巨大な壁が出現する。これも昨日見たやつだ。
「くっ!」
俺の身体能力をもっても、この高さは越えられない。俺は空中で一回転し、何とか体制を整えようとするが…
「アースクエイク!!」
地面が強く振動し、バランスを上手く取れず着地に失敗した。
「くっ!中々やるな!」
「感心してる場合じゃないですよ!勝負はこれからです!アースエッジ!!」
地面から這い出る岩塊を俺は素早く躱し、俺は一条の懐へ入り込む。
「鎌鼬・零!!」
一条の喉元に強力な突きを入れる。
「きゃっ!」
流石の一条もこれを躱すことはできなかったらしい。
「富井さん、やっぱりお強いですね!」
一条が立ち上がり、何やら長い詠唱を始めようとする。
「奥義か…流石にこれは喰らうと不味いな」
今ならあの技も繰り出せるか。一度一騎討ちで使った事があるが、相手の生徒に全治3ヶ月の重症を負わせて停学処分を喰らったあの技…今なら使える!
「無属性剣技参の型…」
俺が剣技を繰り出そうとした瞬間、アリーナの壁が壊れる。
「きゃーっ!!」
「魔物だー逃げろー!」
破られた壁から巨大な植物のような魔物が生徒達を襲い始めた。自身の茨を使って観客席の生徒を攻撃する。生徒は直ちにアリーナから避難したが、逃げ遅れて捕食された者もいた。
「あれは、マンイーター!何故うちの学校の近くに!自警団は何をしているんだ!」
教員の声を聞き、俺は昨日のアークデーモンの件を思い出した。何故連日で上級魔物がこんなに…
「一般生徒は直ちに避難!戦闘に自信のある者は私と共に戦ってくれ!マンイーターは火に弱い!火属性の生徒が残ってくれると助かる!」
「ああ!」
「私も戦います!」
俺と一条は残る事を決意した。
そこでもう1人…
「先生!私も戦います!」
自ら戦闘に躍り出たのは、学級委員長の越谷 綾乃だった。